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世界にひとつだけのプレゼント

    小さな街に愛し合っているカップルがいた。女の名前は沙奈。男の名前は健吾。

    ふたりは結婚を夢見ていたが、いつもケンカばかりしていた。

    ケンカの理由は健吾の愛情表現の下手さにあった。

    幼い頃に母を亡くし今まで男だけの家庭で育った健吾には、女性にどう接して良いかわからなかった。さらに口下手の人見知りという男だった。

    付き合うきっかけも沙奈の一目惚れによる、沙奈からの告白だった。

    ある日、

    「ねえ、私のこと本当に好きなの?」

    「ああ」

    いつも一言で終わる健吾に沙奈はイライラと不安が募っていた。

    本当は『私のこと好きじゃないのかな』など沙奈はいつも考えていた。

    しかし健吾は本当に沙奈のことが好きで愛していた。

    けれど極度の恥ずかしがりやだった健吾は「好きだ」と言いたいけれど、恥ずかしくてとても言えなかった。

    『なんとかしなければ・・・』

    健吾は最近いつもこう考えていた。


    もうすぐ付き合って初めての彼女の誕生日を迎える。


    健吾は、沙奈の誕生日を機会に今までの想いをすべて伝えようと考えていた。

    『でも口下手な俺はどうしたいい・・・」

    健吾は一人部屋で考えた。

    数時間考えた結果、

    『そうだ。手紙だ!』

    口下手な健吾は文章で伝えれば良いと思った。

    しかし、ただ手紙を渡しても面白くないなあ、とも思った。

    『なにか花かアクセサリーと一緒に渡そう』

    健吾はそう思って家を出ようとしたが、ふと花束を持って歩く姿、または一人でアクセサリーを買う姿が、とても恥ずかしくて想像できなかった。

    一旦、部屋に戻り健吾はまた数時間考えた。

    『ネットでアクセサリー買うなら恥ずかしくないなあ』

    健吾はネットでアクセサリーを買って、手紙を書き、今までの想いを沙奈に伝える方法にした。

    ネットで検索する健吾

    『へぇ指輪に文字を入れるって良いかも・・・あっ・・・でもサイズわかんないや』

    『ピアスかぁ・・・ネックレスもいいね・・・でも付けてるの見たことないなぁ』

    なんてことを考えている健吾だが、とても重要なことを思い出した。

    『あっ、アレルギーがあった』

    そう、なんと沙奈には金属アレルギーがあったのだ。

    もちろんアレルギー対策している店がほとんどだろうが、もしものことがあったらと思うと健吾は他のプレゼント探すしか方法がなかった。

    そんな時だった、今見ているアクセサリーショップには他にもプレゼント用の商品があった。

    『おっ、メッセージも付けれるのあるじゃん。これなら手紙より良いかも』

    『しかも、世界にひとつ。オリジナル・・・いいねぇ!』

    それはクリエイト・ア・ブックという絵本だった。

    『よし!メッセージも入れれるしこれに決めた』

    健吾は早速そのショップから注文した。

    それから数日。

    いよいよ沙奈の誕生日当日となった。

    健吾は注文して届いた絵本を大事に持ち待ち合わせの場所に向かった。

    「おはよう」

    場所に着くと後ろから元気な声がした。

    振り返ると、沙奈だった。

    「ねぇ、何持ってんの?」

    目を丸くさせながら沙奈が聞いてきた。

    「はい、これ」

    健吾はとっさにプレゼントの絵本を渡した。あとで渡すはずだったのだが・・・

    「なぁに、これ・・・もしかして・・・私へのプレゼント?」

    「ああ」

    いつものように返事する健吾。

    「開けていい?」

    「いいよ」

    健吾のその声と同時に沙奈はプレゼントを開けた。

    「絵本・・・?。かわいい!ありがとう」

    そして中を見た途端、沙奈の目からは大粒の涙があふれていた。

    そこにはこう書かれていた。


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    沙奈 様

    これは親愛なるあなたのためにつくられた本です。


    お誕生日おめでとう!いつも沙奈には感謝している。
    大好きだよ。ずっと一緒にいようね。愛してる。

    健吾 より

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



    絵本を閉じるなり健吾に抱きつく沙奈。

    ぎゅっと抱きしめる健吾。

    「好きだよ」

    そっと耳元でささやく健吾。

    「うん」

    小さくうなずく沙奈。




    ふたりの愛は永遠に続くのでした。

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